from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

菅さんがここまで説明を嫌うのは誤算だった

ビデオニュース・ドットコム「下村健一:菅政権に入ってわかったことと、できなかったこと」〜

神保: なるほど。菅政権では、脱原発を宣言した翌日に「個人的な見解だ」と語るなど、方向性を示すとすぐにトーンダウンする、という流れが非常に多かったと思います。これはなぜでしょう?
下村: 特に官僚の抵抗に負けた、というわけではなく、メディアや国民の受け取り方の問題だと思います。リーダーは決定事項しか話してはいけないのか。まずは目指すものを旗印として掲げ、段階を踏んで正式に決定していく、というのは当然の流れだと思います。
しかし、菅さんの発言をめぐっては、「議論を始めよう」というメッセージが、あたかも国の決定であるかのように受け取られ、「あくまで議論を始めると言っただけだ」と繰り返すと、「トーンダウンした」「ブレた」という批判を受けてしまう、という構図が非常に多かった。政権発足直後の消費税増税に対する議論もそうだし、脱原発やTPPもそうです。
神保: 支持率が下がり続けるなかで、批判に対して合理的な理由を説明できないものですか?
宮台: 例えば、菅内閣の不手際というよりも、現行の仕組みのもとでは大いなる蓋然性があって、対応の「遅れ」が生じた。今回はたまたま菅直人がチーフをやっているが、政治の仕組みそのものの不全が原因なのだ、と説明できるはずです。逆にいえば、そうした説明を行わず、代表選を行うなど言語道断。代表が替わったところで、同じ問題が起きるならば意味がない。
下村: 確かにそう思いますし、私も説明すべきだと度々伝えています。しかし、菅さんは「言い訳をしている暇はない」と言う。「説明と釈明は違う。これは説明だ」と説得しても、やはりその時間を政策の議論にあてたいと言うんです。
神保: しかしながら、マニフェストを見ればわかる通り、民主党エスタブリッシュメントに対して挑戦状を叩きつけており、メディアも含めてどれだけの虎の尾を踏んでいるかわからない。それだけの戦争をしかけようというときに、命綱になるのは国民の支持でしょう。
エスタブリッシュメントからは総叩き、国民からは総スカンでは、何もできなくなってしまうのだから、やはり国民への説明は重要だったと思う。そうして国民の支持を取り付けるのが下村さんに期待された役割だったのではないか、と思うのですが、それほど簡単ではなかった?
下村: 自分の非力と言わざるを得ませんが、菅さんがここまで説明を嫌うのは誤算でした。あるとき、菅さんからこんなことを言われました。「ナポレオンは、“余の辞書に不可能という文字はない”という言葉を残したというが、単に名文句だからいまに伝えられているのではない。やはり、ナポレオンが実際に多くのことを成し遂げたから、言葉も残ったんだ。何を言うかより、何をするかが明らかに重要だ」と。どの政治家も完璧ではありませんが、国民への説明を極端に嫌う部分は菅さんの欠点だといえると思います。