from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

格差論議

東京新聞「『小泉政治』が格差を助長?

小泉純一郎首相の進めた構造改革に対する評価をめぐる論争が激しさを増している。この5年間に、国民の間の格差は拡大したのか否か−。2人の識者に「小泉政治5年の現実」を語ってもらった。
■NO 高齢化が拡大の要因 大竹文雄阪大社会経済研究所教授
――小泉政権発足後の五年間で、日本人は幸せになったか。
失業率が高くなると、国民の幸福度は下がる。五年間を通じてどうかは分からないが、失業率は最悪だった二〇〇三年より下がっており、その時よりは幸せといえる」
――この間、格差が拡大したとの見方がある。
「所得格差が大きくなったのは事実だが、その要因は高齢化が進んで、(同世代間での)所得格差が大きい高齢者の比率が高くなったことだ。小泉政権とは関係がない。(格差拡大と)騒ぎすぎる」
――ではなぜ、国民の多くが格差拡大を感じているのか。
「株価や都心の地価上昇が一因だ。景気回復を見越してそれらの価格が上がると、それを持つ人の資産も増える。だが、給与は実際に景気が回復してから上がるため、時間差がある。この(資産を持つ人と持たない人の)ギャップは、景気回復期に常に起こるものだ」
――しかし、IT起業家ら多額の資産を持つ「勝ち組」も出てきた。
「起業家らは(バブル崩壊後の不況で)正社員への道がなかったから、起業という彼らなりの生き方を考えた。実際の勝ち組は起業家ではなく、労働者の圧倒的多数を占める正社員だ。正社員とフリーターの若年には格差があるが、例外だ」
――なぜ正社員が勝ち組なのか。
就職氷河期だった一九九七年以降、フリーターとなる若者が増えた。正社員の給与を下げて学卒者の新規採用を続ければ、若年層との格差は生まれなかったが、正社員が『賃下げをせず、パートを採用しろ』との強者の論理で自らを守った」
――正社員とフリーターの格差はいずれ解消するのか。
「今後(就職する)新卒者は正社員の比率が増えるが、既にフリーターになっている人は年も取っており、正社員になりにくい。職業訓練などの公的援助が必要だ」  (聞き手、政治部・関口克己)

おおたけ・ふみお 大阪大大学院博士前期課程修了。大阪府立大講師などを経て、2001年より現職。専攻は労働経済学。京都府出身。45歳。

■YES 競争重視行き過ぎた 橘木俊詔京大教授
――小泉政権の五年間は国民を幸せにしたか。
「格差拡大で下の方に行った人は不幸、上の方に行った人は幸福と感じているのではないか」
――格差が拡大しているという根拠は何か。
「貧困者が多くなった。生活保護を受けている人は、一九九五年には六十万世帯だったが二〇〇五年には百万世帯前後にもなった。一番深刻なのは単身高齢者と、貧しい若者、母子家庭だ」
――同世代間の格差が大きい高齢者が増えただけで、社会全体では格差はそれほど拡大していないという見方もあるが。
「高齢者が増えたということは高齢貧困者が激増したということだ。中流の人が多くいる社会は安定し、全員が勤労意欲を持てた。今は、下に落とされた人が働く意欲を失い、犯罪も増えた。経営者からも格差拡大は悪という意見が出ている」
――格差拡大は小泉政権のせいなのか。
小泉政権以前から不平等化は進んでいたが、(小泉政権の)市場原理主義や競争促進政策がそれを助長したのは事実だ。経済を強くしようとしたのだろうが行き過ぎて、下の方に目が向かなくなり、貧困者が増えた。軌道修正の必要がある」
――首相はセーフティーネット(安全網)の必要性も訴えている。
「実際は逆のことをしている。医療費の窓口負担増や年金の保険料増・給付減など、社会保障を削減した」
――ただ、小泉改革で企業業績は回復した。
「むだな公共支出を減らして景気拡大に寄与した点は評価するが、賃上げや非正規労働者の正社員化など労働者には還元されていない」
――格差の固定化が懸念されている。
「親の経済格差によって、いい教育を受けられる子供と受けられない子供ができ、格差が次の世代に受け継がれてしまう。奨学金制度の充実など、先進国で最低水準の教育支出を増やさなければならない」  (聞き手、政治部・高山晶一)

たちばなき・としあき ジョンズ・ホプキンズ大大学院修了。京大助教授を経て1986年から同教授。専攻は労働経済学。兵庫県出身。62歳。

大竹文雄のブログ「公平な報道」。

東京新聞にインタビュー記事が掲載された。
この記事については、私は非常に不満だ。
教育については、私と橘木先生は同じ意見なのに、
その部分の私の発言はカットされている。