from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

戦争報道

武田徹著「戦争報道」を読み終えた。
広告代理店の電通が何で電通なのか、分かった。元々日本電報通信社という通信社だったんだ。「ニュース配信と引き替えに広告出稿を行うビジネスモデルで地方紙との提携数を増やし、成長してきた」会社ということらしい。かつて「電通のやり方は、広告と報道と絡めた営利企業」と批判されたようだが、今日のマスメディアはそのもの。マスメディア・ジャーナリズムは、その出現当初から延々と戦争遂行のための宣伝媒体としの役目(「プロパガンダを運ぶ役割」)を果たしてきた。国から押しつけだけでなく、自らも積極に宣伝をやってきた側面もある。それは、「マスメディアは、情報価値があるものならなんでも自らの俎上に載せていく。情報価値があるかないか、だけがそこでの選別基準だ」から。価値がある情報とは、新聞なら広告依頼主や購読者数を増やす情報、テレビなら視聴率向上に貢献する情報といえる。「センセーショナルでスキャンダラスな情報こそが、マスメディア・システムを『健全』に機能させる『栄養』」。そこでは、「真/偽という二元コードは二義的なものであり、そこで取り上げられる情報が真であるかないかは選択肢のひとつに過ぎない」と。武田さんは、ジャーナリズムの未来に向けた可能性の一端として、ビデオジャーナリストや「ネットワーク化される個々のジャーナリスト」に期待を寄せている。
個人ブロガーによるジャーナリズムにも期待したいところ。尼崎JR脱線転覆事故のようなケースなら、割とストレートに情報が届いたり、現場に行って直接確かめたりすることが可能だし、自分が当事者になることも可能なため、マスメディアの報道を批判的にみることができる。だが、反日デモを切っ掛けとする日中問題のような政治がらみのことになると、マスメディアの報道のみが頼りで、批判的にみられることなくその報道が鵜呑みにされて、インターネットを介して情報が伝播しがちだ。

戦争報道 (ちくま新書)

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